小さい会社で働く14のメリット

うちの会社の今の社員数は5人です。正真正銘の零細企業です。ちなみに僕自身のキャリアは、同期だけで400人以上いる10,000人規模の大企業からスタートしました。そこに4年間勤めた後、10人規模の広告会社(2年)→30人規模の制作会社(4年)→フリーランスとして独立→会社設立ときて現在に至っています。そのため、大企業で働くこと、中小企業で働くこと、零細企業で働くこと、フリーランスで働くこと、いずれのメリット・デメリットもある程度は分かっているつもりです。

実際のところ、働き甲斐というのは、会社や組織や環境の中で自分が何をやるか、どこまで自分の限界を越えられるか、どれだけの人に好影響を与えられるか、というまさに自分自身の問題であって、会社の規模はあまり関係ありません。なのでフリーランスやベンチャーに勤めている人が時に声高に言いがちな、今どき大企業で働くことを希望する若者ってどうなの、みたいな意見にはあまり賛成ではありません。

とはいえ、うちの会社は零細企業。特に採用にあたっては小さい会社に勤めるからこそ得られるメリットを応募者に感じてもらわなければなりませんし、私自身がそれに自覚的でなければなりません。

ということで小さい会社で働くメリットを考えたら、14ほどでてきたので、ここでご紹介します。

1. 小さい会社は自分の影響力が大きい

10,000人の中の1人として働くのと、10人の中の1人として働くのでは、当然一社員が会社に与える影響は違ってきます。社員数が少ない組織ほど、1人の社員の行動や業績が、会社のブランドや売り上げに直に響いてきます。責任が強くなると言えますが、評価されやすいともいえます。この点で最強なのは社員が1人(というか社長)しかいなくて、自分が2人目になれる環境です。会社の半分の存在になるため、起業の経済的なリスクをあまりおわずに会社に影響を与えて会社経営の楽しさを享受できます。

2. 小さい会社は自分好みの環境を作りやすい

自分の影響力が大きいことは、自分の望む職場環境を作りやすくなることを意味します。社員が5,000人もいれば、一社員の都合に合わせて組織や制度を変えることはできませんが、5人だけの会社であれば、一社員の希望をすぐにトップに伝えることができます。合理的な理由さえあれば、すぐに環境を変えることができます。小さい会社では、一社員のモチベーションや能率が業績に直に響くので、各社員が心地よく働ける環境をできるだけ用意しなければならない、という事情もあります。

3. 小さい会社は社内業務が少ない

これは業態や職能、会社の体質などにもよりますが、大きな会社ほど社内業務が多くなる傾向があります。経験も価値観も異なる多様な社員が数多く所属する組織を束ねるには、統一した仕組みやルールが必要になり、それらを維持するための仕事が必要になるからです。社内業務が好きでたまらない人には願ってもない環境かもしれませんが、多くの人は社内業務の多さに不満を感じ、顧客に向き合う本来の仕事がしたいと思います。小さい会社では、このような組織を維持するための仕事が少なくてすむため、本来の業務に集中しやすくなります。

4. 小さい会社は社会に働きかけやすい

社内業務が少ないから、外の世界に向けての仕事をする時間が多くなります。また組織の階層構造が浅く、意思決定プロセスがシンプルなため、自分で決断する機会が多くなり、仕事を通じて自分の考えを社会に発信しやすくなります。大きい会社では社内業務が多くなり、また複数の意思決定権者の承認の元に活動することも多いため、自分の意志で社会に働きかけている感覚が薄くなりがちです。小さい会社は社内で完結できることが少ないため、必然的に外に向かわなくてはならなくなる、とも言えます。

5. 小さい会社は外との交流に積極的

小さい会社は、少ない社内リソースだけでは仕事が完結しないことが多いため、外部の人との繋がりが増えていきます。また会社が小さいことを自覚し、外に向かって積極的に出ていかないと取り残されるかも、と危機感を持っている人が多いため、外部と積極的に繋がる風土があったりします。大きな会社では社内で仕事が完結してしまうことが多く、また社外の人と接するときも、人対人というより、会社対会社の割り切った付き合いという面が強くなりがちで、社外での濃い人脈が広がりにくい傾向があります。

6. 小さい会社は人間関係が良好

小さい会社においては一社員の影響力が強い故に、人間関係で大きな問題が発生すると、致命的な結果を招きます。小さい会社で働く人たちはそのことをよく分かっているため、特に採用では、経験やスキル以上に、社内でうまくやっていけるか、という点を重視します。結果、小さい会社は良好な人間関係を維持しているケースが多いです。大きな会社では現場が採用に深くタッチできないことも多く、人事異動などのアンコントローラブルな要因も重なるため、運が悪いと最悪の人間関係の中で仕事をする羽目になります。

7. 小さい会社は自分が必要とされている感が強い

良くも悪くもですが、小さい会社は人が少ないので、仕事が属人的になりがちです。会社にとって、属人的であることは組織としての脆さに繋がるため、「あなたがいなくても会社は回る」という状況を作らなければなりません。しかし、リソースの少ない小さな会社はそうはなれないので、結果的に「あなたがいなくては会社が成り立たない」となりがちです。会社をサービス提供システムと考えると属人的すぎるのは問題なのですが、働く当人としては、会社に必要とされていることを実感し、周囲の人の感謝や評価を直に感じながら働くことができます。

8. 小さい会社は経営を間近で見ることができる

小さい会社では目の届くところに社長や副社長がいて、これまた良くも悪くもその行動を間近に見ることができます。経営に関する行動には、マーケティング、ブランディング、人事、法務、財務など、ビジネスの本質となるエッセンスが数多く含まれています。これを近くで体験することは、あらゆる職種や職能にとってプラスになるでしょう。一方、大きな会社は現場からは経営的な動きが見えにくく、経営に関与できる立場ではない限り、経営を直に感じることは稀です。それ故に、仕事を近視眼的に見てしまい、近視眼的にキャリアプランを立ててしまう危険性があります。

9. 小さい会社は幅広く仕事を経験できる

小さい会社は分業されていないことが多いです。例えば肩書はデザイナーでも、設計をしたり、提案書を作ったり、営業や人事の役割を担わされたりすることがあります。専門性を追求したいと思う人には好ましくない環境のように思えるでしょうが、隣り合う領域の経験を積むことはスキルに深みを与え、結果的にプラスになることが多いです。一方、大きな会社では分業化が進んでいることが多いです。専門性が追求できる反面、さらなるスキルアップを目指して新たなフィールドに足を踏み入れたいとき、あるいは市場環境が変わってその専門スキルが陳腐化したとき、経験の幅の狭さが障壁となり、次のステップへ進めない、ということが起こりえます。

10. 小さい会社で働くとたくましく生きられる

小さい会社で働いていれば、経営を間近で見ながら、幅広く仕事を経験するので、最悪会社がなくなっても他でやっていけるような能力が身に付きやすいです。大きな会社にいると、その会社の完成された文化(=閉ざされた文化)に依存して仕事をし続けるので、会社が倒産したり、リストラの対象となったりした際に潰しが効かず、収入や社会的地位を大きく下げるリスクが高まります。大企業で働くというのは、変化の激しい今の時代を生き抜くのに十分な変化への適応力を磨くには、ある意味不利な環境であるとも言えます。

11. 小さい会社は良い肩書が手に入りやすい

肩書なんて、と思われるかもしれませんが、肩書によって周囲の目が変わり、自分が携わる仕事の質も変わります。大企業で課長になれる努力で、中小企業だったら副社長になれるかもしれません。課長は、世の中一般の課長イメージで見られ、課長的な仕事が舞い込んできます。中小企業の副社長には、それが例え中小企業であっても、企業のNo.2であると見られ、副社長に相応しい仕事が舞い込みます。そして立場が変われば、スキルやモノを見る目も変わってきます。これは完全に私の視点ですが、異業種交流会に有名な大企業の課長と見知らぬ中小企業の副社長がいて、どちらか一方としかお話しできないとしたら、私は後者の方を選びます。なぜなら自分で意思決定できる立場にいる人の方が経験も豊富で、物事を動かす力や責任も大きい傾向があるため、同じ時間を費やすのであれば、そういう人と話がしたいと思います。そうやって副社長に近い立場の人が集まってきます。このことは、キャリアパスに案外大きな影響を与えます。

12. 小さい会社は自分の力を試せる

小さい会社で働くと言い訳が効きません。例えば「会社が自分の好きな仕事をさせてくれない」などと言おうものなら、自分の好きな仕事ができるように会社を変えられないあなたに問題があるんじゃないの?と言われてしまいます。大きな会社になると、一社員の手におえない問題が様々出てくるので、優秀な人がスポイルされる、という状況が出てきやすくなります。本当に優秀な人はそれさえ乗り越えてしまいますが、大きな組織の力はかなりの手強さです。小さい会社は自分の力で変えられる領域が広いので、ごまかしがきかないとも言えますが、自分の本来の能力をストレートに発揮できるとも言えます。

13. 小さい会社は収入を上げやすい

小さい会社は一社員の貢献度の証明が比較的簡単で、給与の算定方法もシステマティックではないので、会社の業績さえ上げられれば、割とすぐに給与に反映されます。あるいは目標の収入があった時に、その収入を得るためにどうすればいいかをトップに相談し、それに近づく手段をきちんと教えてもらうこともできます。大きな会社でも最近は柔軟な会社も増えてきていますが、一社員の業績への貢献度が図りにくく、また給与システムがある程度確立しているため、ドンと給与を上げるようなイレギュラー処理は難しく、どうしても平均的なところに収まりがちです。

14. 小さい会社は実はリスクが少ない

今まで挙げた小さい会社のメリットが全てを物語りますが、大きな会社だからリスクが少ないとは言い切れません。大きな会社は一見安定していますが、会社もそこで働く人も、大きな社会的変化に対応しにくくなりがちです。小さな会社は心もとなく見えますが、そこで働いていると、自分の力次第で社会的変化に対応できるようになります。例えばJALや東京電力で働いている人は、入社時に今の様な状況を予想できたでしょうか。その状況を一社員の努力で回避できたでしょうか。そこでリストラになった時に、外の世界でもたくましく生きていけるでしょうか。これはタイタニック号と手漕ぎボートの関係によく例えられますが、巨大氷山が次から次へと流れてくるこの時代に、タイタニック号と手漕ぎボートのどちらに乗り込む方がリスクは少ないでしょうか。正解はありませんが、大きな会社に勤める時には、そのリスクを十分に考えて、自分の立ち振る舞い方を決めておく必要はあるでしょう。

まとめ

というわけで、小さい会社で働くのも決して悪い選択ではない、ということが少しでも伝わればうれしい限りです。もちろん、人と同じように会社にも個性はあります。上記のような小さい企業のメリットのいくつかをあわせ持つ大企業もあれば、小さい会社でもボスが激しいワンマンで大企業並みに窮屈な会社もあります。しかし、傾向としては、小さい会社には上記のようなメリットがあると言えるのではないでしょうか。

ただし、これら14のメリットを、本当にメリットとして享受するには一つ前提条件があります。それは「主体的に行動したい人である」という条件です。できあがっている組織やブランドに乗っかりたい、優秀な人にあやかりたい、誰かに引っ張ってもらいたい、自分は何もせずできるだけ楽して生きていきたい、という考えの方には、上記のメリットの多くは、むしろデメリットとして降りかかってくることでしょう。

結局、小さな会社で働くことが良い経験になるか、悪い経験になるかは、その人次第です。自分がイニシアチブを握って自分の仕事やキャリアを築いていきたいと強く思っている人は、会社が大きかろうが、小さかろうが、どちらの経験もうまく活用して力強く生きていけます。であるならば、働く会社を選ぶときには、会社の規模にはあまりこだわらず、自分のしたいこと、楽しめること、将来のビジョン、そしてその会社と自分との相性を優先して、会社を選んでいっていいのではないかな、と思います。